2010年春に発表された、ヤマハオンロード FZ シリーズの中間クラス車種。 2010年半ばからの流通が始まっており、同時に「FZ6 シリーズ」がカタログから姿を消し始めているので、この後継車種と考えられます。 600cc クラスは、入門 or ライト用途向けとしての色が濃い「XJ6 Diversion」で賄うのでしょう。
既に完成度の高い「FZ1 / FZ1 Fazer」国内仕様が出回っているため世間の注目は比較的薄いのですが、自分としては「FZ6 シリーズ」の様な尖った車種ではなく、「XJ6 Diversion」の扱い易さを重視したモデルであれば、なかなか興味が沸く所です。 機会が巡ってきたので、試乗してみました。
2010年9月現在ヤマハからは同じ排気量クラスのスーパースポーツ系車種が出ておらず、一方 2009年以降 の motoGP レギュレーションに市販車も合わせる動きは確固たる物が出ていませんので、エンジンは「FZ1 シリーズ」 からのスケールダウンした物を使っている様です。 これは一速以外は同じ変速比のギアボックスやサブスロットル付きインジェクションなど、おそらく共通であろう部分が見受けられる事からも推測できます。 しかし、宣伝ではトルクを重視した改良を行ったとされており、
など、結構手が入っています。 これは数値面にも表れていて、最大馬力が 105PS とかなり穏当な数値になりました。 この結果、エンジン特性は確かに「XJ6」を太らせた様なキャラクターとなっています。
個人的にも最大のポイントと言えるのは、「FZ6」で見られた強烈なドン突きの大幅な解消です。 余裕を持ってトルクを確保しており、「FZ6」の後継として順当に扱い易さの向上とパワーアップを果たしています。 但し、それでも逆車としての味付けであるため、「FZ1 / FZ1 Fazer」国内仕様と比べれば明らかに低回転トルクは薄く、それでいて上の領域は中途半端に抑えられている感触を持っての 106PS であり、飽くまでも「FZ6」の後継であるという認識を持っておく必要が有ります。
重量や寸法、写真からも分かる様にフレームは基本的に「FZ1」と同じですが、サスペンションのセッティングは違います。 微妙に軽くなった重量を少しダンピングを抜いてリアクションを増やしたリアサスペンションでバランスを取って、タイヤを 1サイズ細くした結果、" 軽量化「FZ1」" と呼ぶにはやや感触の差が大きくなりました。 酷い表現ですが、街中程度の速度域では少し悪い意味で安定感の抜けた安っぽい動きをする様になっています。
車体なりに乗ると反応が鈍いので、積極的な操作をする方がハマります。 エンジン特性でもそうでしたが、足回りでも「FZ1」と「XJ6」の中間という感じでしょうか。 「FZ6」との比較ははそろそろ記憶が薄れてきていて難しいのですが、ややスポーティな味付けである事を考えると、方向性は似ていると思われます。
もう一つの雰囲気を大きく左右しているのがポジションです。 「FZ1」に比べてハンドルを引いてステップを前に出し、またタンク容量を 1ℓ 減らして内股の部分を削っています。 結果、アップライトというよりはコンパクトになった感じで、「FZ1」よりほんの少しではありますが小柄な体格向けとなりました。 特徴的だったタンクの内股のガッチリ感も無くなって、自分ぐらいの体型だと股ではなく膝でやや不安定にホールドする事になる形状になっています。 この変更は、「FZ1」では持て余す感じがあった人には朗報でしょう。
なお、ブレーキバランスが数値上リア側重視に振られていますが、意外と差は感じられませんでした。 ABS 付きモデルでは、「XJ6」シリーズと同じ 3モード ABS が使われ。 この型の ABS は 3モードだけど油圧減衰ポジションは無段階らしいので、どこまでホンダの電子制御式コンバインド ABS に迫る性能を狙っているのか気になっているのですが、まだ実力を目の当たりにした事は有りません。
デザインについては、
など。
使い勝手については、ボックス類を追加しないと荷物はほとんど載らない点、ユーティリティ類が全く無い点が、残念ながら「FZ1」シリーズと同じ。 一方、スクリーンの形状が変わり、立てて頭上への逃げを増やしつつ、カウル脇からの巻き込み風の量は増やされていて、少し緩め前傾姿勢でも走行風を避けられる様になりました。 ハンドルミラー化カスタムへの影響は不明です。
個人的に気になるのがセンタースタンドの削除。
ここしばらくの FZ シリーズは、ハーフカウルタイプに必ず標準でセンタースタンドが付いていたのですが、「Fazer8」ではそれが見当たりません。
「軽量化の理由の大半が実はそれなんじゃないか?」とも思え、使い勝手の面で大きな懸念材料でもあります。
足回りを確認した所、フレームは「FZ1」シリーズと同じでもエキゾーストパイプの逃げが無いので、そのままでは流用できない公算が高く、ヤマハからの専用オプションのアナウンスも有りません(追記参照)。
やはり、「FZ1」シリーズのスケールダウンではなく、"「FZ6」シリーズの後継" と呼んで差し支え有りません。 良くも悪くもジャジャ馬感が無くなったと言えばそうなのですが、断然乗り易くなってトルクも増していますから、「FZ6S」で迷っていたならば「Fazer8」も十分検討に値します。 「XJ6」シリーズとの比較は、いきなり取り回しや乗り味が太くなってしまうので、やや難しい物となります。
一方、それほど大きな価格差が無い事から、トータルバランスで考えた場合は全体的に一回り仕上がりの優れた「FZ1」シリーズの方がかなり優勢です。
センタースタンドについて、純正オプション追加の情報が有りました。
国内代理店のモトコ経由などで入手できそうです。
| FZ8 | Fazer8 | |
|---|---|---|
| 全長 | 2,140mm | |
| 全幅 | 770mm | |
| 全高 | 1,065mm | 1,225mm |
| 軸距 | 1,460mm | |
| 最低地上高 | 140mm | |
| シート高 | 815mm | |
| 車輛重量 | 211kg(ABS 付 216kg) | 215kg(ABS 付 220kg) |
| 乗員定員 | 2人 | |
| 最小回転半径 | 3.0m | |
| エンジン種類 | 水冷4サイクルDOHC4バルブ並列4気筒 | |
| 総排気量 | 779cc | |
| 内径×行程 | 68.0mm × 53.6mm | |
| 圧縮比 | 12.0 | |
| 最大出力 | 106ps(78.1kW)/ 10,000rpm | |
| 最大トルク | 8.4kgf·m(82N·m)/ 8,000rpm | |
| 燃料供給方式 | 電子制御燃料噴射式 | |
| 始動方式 | セルフ式 | |
| 点火装置方式 | TCI 式バッテリー点火 | |
| 潤滑方式 | 強制圧送ウェットサンプ | |
| 燃料タンク容量 | 17ℓ | |
| 潤滑油容量 | 3.8ℓ | |
| クラッチ形式 | 湿式多板コイルスプリング | |
| 変速機形式 | 常時噛合式 6段リターン | |
| 変速比 1速 | 2.692 | |
| 変速比 2速 | 2.063 | |
| 変速比 3速 | 1.762 | |
| 変速比 4速 | 1.522 | |
| 変速比 5速 | 1.350 | |
| 変速比 6速 | 1.208 | |
| 減速比(一次 / 二次) | ? / 2.875 | |
| スプロケット | 前 16T / 後 46T | |
| キャスター角 | 25°00′ | |
| トレール量 | 109mm | |
| 懸架方式(前) | テレスコピック式(倒立・インナーチューブ⌀43mm・左右分担減衰力発生方式) | |
| 懸架方式(後) | スイングアーム式・ショックアブソーバ 1本(イニシャル調整のみ) | |
| ホイールトラベル | 前 130mm・後 130mm | |
| タイヤ(前) | 120 / 70ZR17(58W) | |
| タイヤ(後) | 180 / 55ZR17(73W) | |
| ブレーキ形式(前) | 油圧式 W ディスク(⌀310mm) | |
| ブレーキ形式(後) | 油圧式 S ディスク(⌀267mm) | |
| フレーム形式 | ダイヤモンド(アルミニウム合金 + 鋼) | |
| 発売日 | 2010年半ば | |
| 参考小売価格 | 903,000円(税込) | ABS無:955,500円、ABS有:1,008,000円(税込) |