月見酒(MINT's World)

どんなバイクなのか?

生い立ち

タンデムライドで 10日間・3,000km の走行を快適に行える高次元な走行性を有する、世界最高水準の欧州縦断ツアラーをコンセプトに、 完全新設計の 1,300cc クラスエンジンをアルミ合金ダイヤモンドフレームに吊るし、2000年当時の最新技術をふんだんに盛り込んだヤマハのスポーツツアラーです。

趣は、ヤマハ版「VFR(RC46)」と云った所。「ST1300 Pan European(パンヨーロピアン)」は割と保守的な設計で、BMW の RT・GT シリーズ対抗の様な所が有り、これらとは少し違う雰囲気です。 この点は試乗するまで私も理解していなかったのですが、このクラスの車輛にしては非常に軽く作られていて、それでいて乗り心地や装備が充実している所から、現在はそう理解しています。

これに、クラッチ操作を伴わず、かつ手での操作に依るシフトチェンジを可能にする、YCC-S と云うセミオートマチックトランスミッション機構を装備したタイプが「FJR1300AS」です。 ハンドシフトは左手側のスイッチボックスに有り、パッシングスイッチ下を奥から手前に押すとアップ、ホーンスイッチ下を手前から奥に押すとダウンとなります。
FJR1300AS 左スイッチボックス(正面)写真 FJR1300AS 左スイッチボックス(見下ろし)写真

YCC-S の出来栄え

2008年春の PRESTO の試乗会で乗ってみた所、

手だけでなく足でもギアシフト操作が可能で、シフトチェンジする際にはアクセルを全閉にする必要が有る事から、クラッチを握らないだけで普通のバイクと操作感がほぼ変わらない事に気付きました。 ハンドシフトは、切り替えボタンで封印しておく事すら出来ます。 そもそも、オートマチックではなく飽くまでもマニュアルのトランスミッションであり、機構自体も実際にクラッチの断絶と接続を自動で行っているため、基本は同じなのです。

ただ、シフトアップは確かに同じですが、発進・停止とシフトダウンは違ってきます。

FJR1300AS 操作方法図 1 FJR1300AS 操作方法図 2

大きな違いは、以下の 3点。

  • ボトムニュートラルになっている。
  • シフトダウンでもアクセルは全閉。
  • 当然、半クラは要らない。

案内員に依ると、発進時にいきなり開けるとトルクを持て余してギクシャクするため、

  1. リアブレーキを踏んだ状態で 1速に手でシフトアップ(フロントブレーキ + 足でも構わないが、車重を考えるとこの方が踏み換えが不要で楽)。
  2. リアブレーキを踏んだまま、アクセルを微妙に開けて駆動力を引き出し、リアサスペンションを縮める。
  3. その状態から、リアブレーキを離しつつアクセルを開けていって発進。

と行えばスムーズ。 また、シフトダウンを手で行うと感覚的に操作し易く、素早くシフトダウンして再加速しようとすると、普段癖が有るので混乱しますが、エンジンブレーキを効かせた状態のままボタンをポチポチと押せば、落ち着いてギアを落とせます。 前述の通りマニュアル操作なので、停止する時には忘れずに落としておかねばなりません。

そして、停止時はもちろんそのまま停止すれば OK。 この時に素晴らしいのは、ホンダ「DN-01」やマニュアルモードの有るスクーターに比べてかなり極低速度まで駆動力を離さない点で、アクセルとブレーキを調整すれば一本橋走行がさほど違和感無く可能です。 1速へのシフトダウンも 40km/h 辺りで可能になる等、現実に即していて大変実用的と言えるでしょう。

結構ガチャガチャ操作してもちゃんと付いて来ますので、「クラッチ操作が嫌だ!」と云う人も、この完成度なら満足出来るかもしれません。

乗り味については?

  • 走り出せば〜ではなく、立っていても割と軽く感じる。重量車嫌いの私が納得する程。
  • 高速スラローム的な操作を軽い感じで行っても、イヤイヤせずに付いて来る。いきなりズシッと重さが来たりしない。
  • 車重が大きいことも有るが、適度にダルくてドン突きが少ない、アクセルが軽い。
  • 無闇に低回転トルクを主張せず、余裕のある馬力は高速走行時の再加速に割かれている。

と、かなりの好印象です。 低速度ではもちろん気を遣わされますが、他の重量級車に比べれば軽い物。

おそらく、この印象には乗車姿勢も大きく関係しています。 自分には非常にしっくりくる乗り易いアップライト姿勢で、ハンドルとステップの位置関係が理想的。 タンクも無闇やたらと太い印象は有りません。 さらにここから、

  • シート上下 2 段階
  • ハンドル前後 3 段階

の調整も可能なんですから、高級車の豪華装備とは恐ろしい物です。

その他の点について

  • 2008年のマイナーチェンジ箇所が結構多くて大きい。
  • 特にアクセルの重さが格段に違う。両方に乗って比べたが、「正直、2007年式だけにしか乗っていなかったら、印象は遥かに悪かっただろう」と思う程。
  • 2008年から、パニアケースがオプション扱いになった。これで、かなり軽快感が上がっていると思われる。
  • 電動スクリーン調整の効果が大きい。下げた時にはちゃんと風が通り暑過ぎる事が無く、上げればちゃんと防風。
  • 股が 1300cc とは思えない程熱くない。
  • 白バイの乗車感ってこんな感じ?
  • デザインが良いなぁ〜。

この完成度の高さは、正直言ってちょっと欲しくなる程。 でも、やはり現実的な重量や維持費を考えると下位モデルが有る方がありがたいしそれで十分な訳で、「FJR600A」とか作ってくれませんかね…。

主な諸元(南アフリカ仕様 2008年式)

全長2,230mm
全幅750mm
全高スクリーン最低位置 1,315mm・最高位置 1,450mm
軸距1,545mm
最低地上高130mm
シート高805mm
車輛重量295kgYCC-S 無しは 291kg
乾燥重量268kgYCC-S 無しは 264kg
乗員定員2人
エンジン種類水冷4サイクルDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量1,298cc
内径×行程79.0mm×66.2mm
圧縮比10.8
最大出力143.5ps(105.5kW)/ 8,000rpm
最大トルク13.7kgf·m(134.4N·m)/ 7,000rpm
燃料供給装置形式電子制御フューエルインジェクション
始動方式セルフ式
点火装置方式TCI 式バッテリー点火
潤滑方式ウェットサンプ
潤滑油容量4.9ℓ
燃料タンク容量25ℓ
クラッチ形式湿式多板
変速機形式常時噛合式 5速リターン(YCC-S 付き)
駆動方式シャフト
タイヤ(前)120 / 70ZR17(58W)
タイヤ(後)180 / 55ZR17(73W)
ブレーキ形式(前)前後連動 ABS 付き油圧式 W ディスク(320mm
ブレーキ形式(後)前後連動 ABS 付き油圧式 S ディスク(282mm
ホイールトラベル前 135mm・後 125mm
懸架方式(前)テレスコピック式(正立・インナーチューブ48mm
キャスター角26°00
トレール量109mm
懸架方式(後)スイングアーム式・ショックアブソーバ 1本(リンク式)
フレーム形式ダイヤモンド(アルミニウム合金)
発売日2001年(AS は 2005年から)
市場定価1,659,000円(YCC-S 無しは 1,501,500円)
2008年10月28日
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