月見酒(MINT's World)

どんなバイクなのか?

誕生

排ガスと騒音の規制強化に伴って、国内販売モデルの大粛清が行われた 2007年、その翌年にカウル付きの 250cc を唯一売り続けてきたカワサキが、そもそも 90年代を最後にまともなロードスポーツの新車など一切無かったこのクラスに、大胆にもニューモデルとして投入してきたのがこれ。 日本ではその「ZZ-R250」の後継とされますが、海外展開が幅広く、実際には海外でずっと売られていた「GPZ250R」の血統と見た方が正しい気がします。

素晴らしい見た目

パッと見で分かる様に ZX-xR シリーズを完璧にミニチュア化しており、見た目のインパクトは抜群。 内部まで突っ込めばコストダウンの跡が見られはしますが、カウルのラインや、テール周りの雰囲気、ブレーキディスクにカワサキが最近御執心のペータルディスクを装備する等、 ここまでじっくりとディテールを作り込まれた 250cc バイクは、バブル期以降では「V-Twin MAGNA」以外知りません。

難しい事は抜きにして、この見た目に惚れたら迷わず乗ってしまえばいいバイクと言えます。

走りは?

一方、走行能力については、やはり厳しい新規制をクリアする為にかなりスポイルされている部分が在る事を否定出来ません。 元々超高回転型並列 2気筒エンジンだった物を、何とかして規制枠内に収まる様に抑えてしまっている為(ほとんど共通部品が無い程手を加えてはいるそうですが)、数値的に重たい車重も加わってどう贔屓目に見ても低速回転も高速回転もヘロヘロです。

しかし、ハンドリングや扱い易さについては意外性がある程上々。

  • 流行に逆らった細いサイズのタイヤは、安さとフロントの軽さを特徴とする IRC「RX-01
  • ほとんどネイキッドと変わらない高さに挙げられ、切れ角を左右 35°確保したセパレート式ハンドル
  • がっちりして現代的でありながら、細すぎず太すぎずな無理の少ないニーグリップが出来るタンク形状
  • 小柄なライダーを意識してか、ちょっと高めのステップ

この様な特徴から、見た目から想像する様なスポーティさを求めると完全に裏切られますが、非常にスタンダードで乗り易い物となっています。 重さとパワー不足を一見過剰っぽい細さでバランスさせた様な感じでしょうか。 IRC「RX-01」と云う事も有り、タイヤのグリップやバンク角に頼らず、車体に任せてスマートに乗りこなす事に徹するが良しの様です。

戦闘力の点で考えれば、2007年時点で現役だったロードスポーツモデルには、正直言って敵わないでしょう。 見ての通り特段新技術が盛り込まれている訳でもない為、同じ腕前ならば、以前のモデルの方が速く走る事についてはより簡単です。

使い勝手について

前述の通りの乗り易さがまず光ります。 あえてディメンジョンについてはスポーティな演出を避けた事で、近年の同クラススポーツ系ネイキッドよりも疲れにくく乗り易そうですらあります。 維持費が安そうな点も特筆。 ハンドルをフルに切ってもタンクで指を挟まない所も、細かい様で重要なポイントと言えます。

但し、コストダウン圧力が他の使い勝手に微妙な影を落としていて、 シート下収納や荷物積載はスポーティなデザインからも期待出来ない物ですし、ブレーキレバーの調整が無かったり、メーターも最低限のインジケーターしか装備していません。 「レプリカ的なスポーツ車じゃないなら、ツアラーなのか?」と訊かれると、首を捻ってしまう所です。

個人的に気になったのが、半クラの少なさ。 最後の最後でカツンと繋がる感じしかしないので、発進時は 1980年代レーサーレプリカ的トルク感。 ちゃんとコントロールしないとエンストを頻発させそうです。

オススメ?

2008年現在ロードスポーツ系が当車種以外全滅している為に、他に選択肢が無いと云う事情は有るものの、タイホンダ「CBR150」等と同じハッタリスポーツ…とは言い過ぎでしょうが、やはり性能でも使い勝手でも買うバイクでは有りません。

決め手は、前述の通り見た目です。 街中で見掛けた時に、知っていれば車格の違いでこの車種だと判りますが、このクラスではレーサーレプリカ全盛期以来見なかった強いインパクトが有る事には違い無く、ロードスポーツ系として普通に恰好好く収まっている為、決して見栄ではなく一目惚れで買って好いバイクです。

余談

Ninja250R のメーター
個人的には、このメーターは高く評価しています。 私は無類のアナログ式好きなので、距離計までアナログになっている所は流石カワサキだとすら思ってしまいます。 見栄を張らないタイヤの細さもそうですが、場合によってはある程度細かい見た目については気にしない欧州的な設計思想が混じっている様です。

そもそも、デジタル式はアナログ式よりもローコストだから採用が増えた面も有ったはずなのに、実際には安いバイク程アナログを使っている辺り、デジタル化する理由の大半は見た目の為なんですよね。 せめてカワサキだけでも、見易いアナログを忘れないでいてくれると嬉しいのですが…。。

余談

アメリカでは、「ER-6f」が「Ninja650R」と云う名前で売られています。

主な諸元(国内仕様 2008年式)

全長2,085mm
全幅715mm
全高1,110mm
軸距1,400mm
最低地上高130mm
シート高775mm
乾燥重量151kg
乗員定員2人
エンジン種類水冷4サイクルDOHC4バルブ並列2気筒
総排気量248cc
内径×行程62.0mm × 41.2mm
圧縮比11.6
最大出力31ps(23kW)/ 11,000rpm
最大トルク2.1kgf·m(21N·m)/ 8,500rpm
燃料供給方式電子式
始動方式セルフ式
点火装置方式フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式ウェットサンプ式
潤滑油容量1.7ℓ
燃料タンク容量17ℓ
クラッチ形式湿式多板コイルスプリング
変速機形式常時噛合式 6速リターン
変速比 1速2.600
変速比 2速1.789
変速比 3速1.409
変速比 4速1.160
変速比 5速1.000
変速比 6速0.892
減速比(1次 / 2次)3.086 / 3.071
スプロケット前 14T / 後 43T
リム径(前)2.75in
タイヤ(前)110 / 70-1754S
リム径(後)3.50in
タイヤ(後)130 / 70-1762S
ブレーキ形式(前)油圧式 S ペータルディスク290mm
ブレーキ形式(後)油圧式 S ペータルディスク220mm
懸架方式(前)テレスコピック式(正立・インナーチューブ37mm
懸架方式(後)ユニトラックスイングアーム式・ショックアブソーバ 1本
ハンドル切れ角左右 35°
フレーム形式ダイヤモンド
発売日2008年4月
メーカー希望小売価格498,000円
2008年8月29日
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