月見酒(MINT's World)

どんなバイクなのか?

生い立ち

「YZF-R1」のネイキッド版として 2001年に登場した「FZS1000 FAZER(北米のみ FZ1 の名前で販売)」の後継車種であり、 2004年モデルエンジンをベースにしてフレームレベルから全面的な刷新を行い、「YZF-R1」程本気過ぎる物は要らないけど…と云うニーズをがっちり掴んでいる、スタイルも性能も綺麗にバランスを取っている一台です。

そして 2008年、これを日本国内向けにリファインした物を、突然とも言える程のタイミングで大々的に売り出しました。 一時、もう日本向けにはスクーターとアメリカンしか作る気が無い様にすら見えたヤマハですが、この車種のプロモーションにはかなり力が入れられ、スペシャルプロモーションサイトを用意し、専用の試乗会が全国で開かれる程でした。

モーターサイクルショーで感じたインパクト

CB500S」を手に入れるまで大型二輪車にほとんど興味が無く、また、2004年辺りから逆車のプロモーションをヤマハ自身が絞っていた事も有って、「FZS1000 FAZER」のフレームニーグリップが気に入らない程度のイメージしか無かった私にとって、2008年の大阪モーターサイクルショー前のニュースリリースはなかなか衝撃的でした。

そこで、結構期待してモーターサイクルショーに見に行ったのですが、「FZ6 Fazer S2」よりも少し大人しめの顔立ちで、現車を見た時にどのアングルからもやり過ぎ感が無く、元々「YZF-R1」二代目のデザインが好きな私にとっては心地良い感じ。 さらに、跨るとフレームグリップな感じが無くなっていてハンドルやステップも違和感の無い位置。 一般的には高めと言われる優等生アップライトポジションとは言え、私の好みではさらに気持ち 5mm 程バックして絞りたい所ですが、まあ許せる範囲です。 見た所ケーブル類に余裕が無いので、交換は困難っぽいですし。

これはエンジンも是非見たいと思った所へ、試乗会の知らせが舞い込み、当然参加したのでした。

走行性能は?

なかなかゆったりした環境で試乗をした中で真っ先に感じたのは、インジェクション調教レベルの高さ。 「FZ6 Fazer S2」であれだけ私を愕然とさせたメーカーと同じ所の同系列シリーズとは、とても思えない様な扱い易さです。 流石に 1000cc も有ると低速の薄さは少なく、中速のコントロール性もばっちり。 おそらく、ある意味での多少のダルさは、結構なペースで日本の峠を走った時にこそポジティブにハマる事でしょう。

また、乾燥重量ベースなら 200kg を割っているのではないかとも推測される軽量性にも、目を見張る物が有ります。 むしろ、この軽さでフルパワー 150ps も有ったらヤバいのではないかと思わされる程、 高速回転域部分をあまり潰さずにおいた為、車体に対して妙に上に余裕の有るオールラウンダーと言った所なのでしょう。

しかし、ハンドリングが忙しない訳ではなく、どちらかというと安定志向なのではないかと思われます。 ハンドルは後 5°位切れて欲しい所ですが、「YZF-R1」の血統でありながらもあまりカリカリしない程度に走るのが似合いそうです。 「YZF-R1」の峠マシンの要素から、楽しみの部分だけを引っ張り出した感じでしょうか。

但し、これは「FZ1 Fazer」の場合で、「FZ1」の場合はバンク中にガクっと倒れるポイントが有り、本来の素性が安定志向っぽいので限界が有りそうな気がしますが、国内仕様なら振り回しも可能な印象。 でも、よく考えてみてバランスが良いのは「FZ1 Faser」の方。 しかも、同じ系統で考えるなら、数値で「FZ1」が勝っていても現実的な性能ではカワサキの「Z1000」が勝つのだろうなとは思います。

なお、「FZ1」と「FZ1 Fazer」は、カウルの重み以外にはセッティング面で差が無いそうです。

使い勝手は?

一方使い勝手ですが、本体の積載能力が絶望的です。

  • ヘルメットホルダーが無い(!)。
  • シート下は、書類を押し込む部分と U 字ロック専用スペースのみ。
  • シートのフックなど全く無い。泥臭い荷物積載不可。
  • これだけボリュームと余裕のあるカウルにしておきながら小物入れ無しですか…。
    FZ1 Fazer のハンドル周りの写真

しかし、過剰な尻上がりデザインではないのでハードケース類を付けても違和感が少ない思われ、それを前提に設計されている可能性が有ります。 スタイリングの変化を推し進めた結果として車体自体が泥臭い荷物積載方法を否定する方向は、2000年代後半から顕著なので、その流れの一つに過ぎないとも言えます。 「FZ1」に関しては、スポーツ走行専用のイメージかもしれません。

一方、

  • 「FZ1 Fazer」には「FZS1000 FAZER」から引き続きセンタースタンドを標準装備(「FZ1」はオプション)。
  • マフラーに金属製ガードを標準装備して、多少のダメージからは守られそう。
  • メーター上に走行風を取り入れてエアースルーを確保するダクト有り。
  • 燃料タンク容量 18ℓ は少々少なめだが、レギュラーガソリン仕様になっている。
  • 身長にも依ると思うが、取り回し時に腰を入れ易いタンク形状になっていて、安心感が有る。
  • 豊富なオプションパーツ群(カウル、外装小物、ハンドルミラー化キット他多数)

等、好感を持てる設計も少なくありません。

その他に気になった所等

  • ある程度風を通すデザインな為、高速走行になると巻き込み風が気になり始めると思われ、アップスクリーン化はツーリング用途なら行いたい。
  • ハンドルに伸びているケーブル類の余裕がほとんど無いので(向きを変えるのも辛いかも)、特に楽にする方向のハンドル変更は難しい。
  • サイドスタンドの位置が最悪で、乗っていても降りていても出しにくい蹴りにくい。
    FZ1 Fazer の左ステップ周りの写真
  • 国内馬力自主規制が撤廃されるかされないかのタイミングで投入されているが、試乗会での営業マン曰く開発時は規制有りを前提で開発されてたので、2008年モデルはこの出力数値となっているそう。今後については不明。
  • 所有者の話に拠るとエンジンの発熱が多く、シートの熱を回避する為にゲルザブを敷いたり、漏れてくる熱風を防ぐ為にタンクとフレームの隙間を埋めたりする人も居るらしい。
  • 逆車仕様だと、多少ドン突くと云われる。また、2006年以前はもっといかにもインジェクションなレスポンスだったらしい。
  • ネイキッド仕様の「FZ1」は、FZS 時代には無い。垂れヘッドライトは、MV アグスタ「BRUTALE(ブルターレ)」の流れを組んでいるのだろうか。

乗り換える?

うちの用途でメイン車輛として考えないのであれば、致命的な欠点が無く非常に魅力的なのですが、ハッと冷静になった時に「この演出に 1000cc も要るのか?ミドルでは不可能なのか??」と思って現実に戻ってしまいます。 車体価格も燃料・維持費もバカになりません。熱いのもどうかなと思ってしまいます。 試乗コース内で使うことが難しかったので 7000rpm からの伸びは不明ですが、94ps まで抑えられている以上期待は出来ず、これでリミッター有りは仮にクローズド用とした場合にはちょっと虚脱感有り。 かと言って、フルパワー 150ps は盛り過ぎなのでアウトとなると…。

でも、国内仕様が有る事で、純正パーツの供給安定性やサードパーティー製パーツの充実性、整備研究成果の蓄積が高まるでしょうから、かなりおいしい車種である事には間違い有りません。 基本的には、過去指折りで非常に高く評価しています。

主な諸元

「FZ1」と「FZ1 Fazer」は、註釈が無い場合は国内仕様 2008年式。 「FZS1000 FAZER」は比較用で、欧州仕様 2001年式。

FZ1FZ1 FazerFZS1000 FAZER
型式EBL-RN21J5LV1
全長2,140mm2,125mm
全幅770mm765mm
全高1,060mm1,205mm1,190mm
軸距1,460mm1,450mm
最低地上高135mm140mm
シート高815mm820mm
車輛重量219kg225kg231kg
乾燥重量208kg
乗員定員2人
燃料消費効率21.0km/ℓ(60km/h 定地走行テスト値)
最小回転半径3.0m
エンジン型式N518E
エンジン種類水冷4サイクルDOHC5バルブ並列4気筒
総排気量998cc
内径×行程77.0mm × 53.6mm74.0mm × 58.0mm
圧縮比10.511.4
最大出力94ps(69kW)/ 9,000rpm
(欧州 150ps(110.3kW)/ 11,000rpm
143ps(105.2kW)/ 10,000rpm
最大トルク8.2kgf·m(80N·m)/ 7,500rpm
(欧州 10.8kgf·m(106.0N·m)/ 8,000rpm
10.8kgf·m(105.9N·m)/ 7,500rpm
燃料供給方式電子制御燃料噴射式機械式(BSR37)
始動方式セルフ式
点火装置方式TCI 式バッテリー点火
潤滑方式強制圧送ウェットサンプ
燃料タンク容量18ℓ21ℓ
潤滑油容量3.8ℓ3.7ℓ
クラッチ形式湿式多板コイルスプリング
変速機形式常時噛合式 6速リターン
変速比 1速2.5332.500
変速比 2速2.0621.842
変速比 3速1.7611.500
変速比 4速1.5211.333
変速比 5速1.3501.200
変速比 6速1.2081.115
減速比(1次 / 2次)1.511 / 2.6471.581 / 2.750
スプロケット前 17T / 後 45T
キャスター角25°0026°00
トレール量109mm104mm
懸架方式(前)テレスコピック式(倒立・インナーチューブ43mm・左右分担減衰力発生方式・フルアジャスタブル)テレスコピック式(正立・インナーチューブ43mm・フルアジャスタブル)
懸架方式(後)スイングアーム式・ショックアブソーバ 1本(フルアジャスタブル)
ホイールトラベル前 130mm・後 130mm
タイヤ(前)120 / 70ZR1758W
タイヤ(後)190 / 50ZR1773W180 / 55ZR17
ブレーキ形式(前)油圧式 W ディスク(320mm油圧式 W ディスク(267mm
ブレーキ形式(後)油圧式 S ディスク(245mm油圧式 S ディスク
フレーム形式ダイヤモンド(アルミニウム合金)ダブルクレードル(鋼管)
発売日2008年2月29日(海外 2005年末)2001年
メーカー希望小売価格997,500円1,050,000円
2008年10月23日
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