2008年春、コンセプトモデル車そのままに出てきた様な、スクーターではない油圧トルクコンバーター式オートマチックトランスミッションを搭載したバイクです。 かつて、ホンダ自身がオートマのロードスポーツ車輛を出した事が有る為、世界初ではないのですが、メジャーメーカーの現代的設計市販車としては全く新しい試みと言っても差し支え無いでしょう。
触れ込みではニーグリップのあるオートマ車、数値上はスクーターに近いディメンジョンですが、エンジン搭載位置から重心は前寄りでステップ位置が投げ出しスタイルである為、基本的にはアメリカン系。 一見同じクルーザータイプでもほとんど普通のオンロードタイプと変わらない「ゴールドウィング」とは対照的です。
しかし、ここで思い出すのが、この車がオートマ大国である日本を主なターゲットとしており、「四輪車に近い物を目指した」と開発陣が語っていた事です。 左手の操作が無く、前後連動ブレーキがフットブレーキのみを使う事前提で調整されている為、
以上 2点を残して、二輪車的な操作がギリギリまで削減されています。 特に、慣れてくると手を使わずに足だけでブレーキングしたくなる感覚は独特です。 確かにこれは、新しいカテゴリを作り出したと言っても差し支えないでしょう。
よって、ロードスポーツ車輛だと思うと肩透かしを食らいます。 これは、スクーターよりも「ゴールドウイング」よりも、より乗用車らしい何かです。
エンジンは、ドービルと同じ挟角 52°680cc V ツインエンジン。 流れに合わせてのんびり走るには困りませんが、ちょっと車重に負けていてアンダーパワーな所は有ります。 音は非常に控え目。
そして、最大の特徴であるミッションですが、同じマニュアルモードを持つ「FORZA Z」と比べて、ドライブモードとスポーツモードの使用感は似たり寄ったり、マニュアルモードの反応は幾分早いかなと言った所。 一般的なセダン車の挙動と変わらず、大人しく乗っていれば違和感無く、ちょっと無理をしようとすると気持ち悪い、そんなレベルに達しています。
マニュアルモードの場合、無謀な操作は自動的にシャットアウトしてくれるのですが、やや過保護気味な所が有り、 手動で 1速に出来る速度が約 25km/h 以下、自動では回転の落ち方に左右されるものの概ね 20km/h 程度。 1速で引っ張り続けるとこうはならないのですが、一度 2速以上にすると 40km/h 以下の領域で鋭い再加速を行わせるのは難しくなっています。
一方で、減速状態の時に自動的に駆動が切れる速度は約 15km/h。 これは早過ぎる印象で、まだ前に進んでいる雰囲気の時にスポンとトラクションが抜けるので、20km/h まで落としたらなるべく一気に止まる様にしないと立ちゴケしてしまいそうになります。 そこからのアクセルレスポンスはまずまずなのですが、渋滞路では要らぬ苦労を強いられそう。 確かに頑張る事を諦めて車体なりにボーッと乗るとそれほど気にならないのですが、バランスを取り難い車体なので、とっさの時の為にもう少し粘る様に調整すべきだと思います。
シャフトドライブの挙動は、このバイクなりの乗り方で何かを感じる事はほとんど無いでしょう。
メーターを中央に低くまとめて風防も低くしてある為、視界は非常に広く感じられます。 ショートスクリーンのスクーターと同じ感じですね。 加えてミラーも低く遠く設定してある為、ほとんど計器やミラーを見なくなります(笑)。 このミラーは視界が広い様で陜く、特に横方向があまり見えないので、真っ直ぐ大人しく走っているのが安全。
サスペンションは非常に柔らかく、静粛性の高さも有って、乗り心地はトップクラスです。 ただ、ラジエーターの強制冷却ファンが回り始めるのが早く、さほど気温が高くもないのに暑苦しい思いをし易い為、意外とエンジン周りの通気性が良くないのかもしれません。
これはあまり良くありません。
まず、車輌重量 269kg と云う強烈な重さがネック。
スクーターと違って収納スペースはほぼ在りませんし、デザイン的にもオプション設定的にも荷物を載せる事は考えられていない構造です。
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もうこれは、「見た目が恰好好いから構わないじゃないか」と納得するしかないかもしれません。
また、排気量が 680cc なので、SUZUKI「SKYWAVE 650」で上限を切っている 2008年現行の AT限定大型二輪免許では乗れません。
燃費が悪そうなのも気になる所ですね。
ホンダ御得意のやり過ぎ感が漂わぬスマートな見た目に、今までには無かったけど「なるほど」と納得の行く乗り味。 決して出来は悪くありません。
しかし、購買ターゲットはどこなのか?と云う点は気になります。 今までのバイク試乗会にはなかった雰囲気で試乗会を行ったり、
構造の特殊性もあって Dream 店でのみのサポートの厚い販売体制を取る等していますが、 見栄を張れる排気量が不足していて高齢層や保守層にはウケが取れないし、微妙にスクーターに近い為にソロでは乗り辛く富裕シングル層にも向かず、使い勝手に問題があってファミリー四輪の代わりにはならず、価格が高くて若年層は近寄れない等、想像の範囲を越えてしまっています。
オートマチックトランスミッションのロードスポーツ需要への回答としては、だいぶ間違っている様な…。 バイク市場の転換を狙っての、壮大な実験機なのかもしれませんけどね。
| 型式 | EBL-RC55 |
|---|---|
| 全長 | 2,320mm |
| 全幅 | 835mm |
| 全高 | 1,115mm |
| 軸距 | 1,610mm |
| 最低地上高 | 130mm |
| シート高 | 690mm |
| 車輛重量 | 269kg |
| 乗員定員 | 2人 |
| 燃料消費効率 | 25.0km/ℓ(60km/h 定地走行テスト値) |
| 最小回転半径 | 3.2m |
| エンジン型式 | RC55E |
| エンジン種類 | 水冷4サイクルSOHC4バルブ52度V型2気筒横置き |
| 総排気量 | 680cc |
| 内径×行程 | 81.0mm × 66.0mm |
| 圧縮比 | 10.0 |
| 最大出力 | 61ps(45kW)/ 7,500rpm |
| 最大トルク | 6.5kgf·m(64N·m)/ 6,000rpm |
| 燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射式(PGM-FI) |
| 始動方式 | セルフ式 |
| 点火装置方式 | フルトランジスタ式バッテリー点火 |
| 潤滑方式 | 圧送飛沫併用式 |
| 燃料タンク容量 | 15.0ℓ |
| クラッチ形式 | 変速機内油圧調整式(ロックアップ機構付) |
| 変速機形式 | 油圧機械式(電子式マニュアルモード付(HFT)) |
| 変速比 | 3.000 〜 1.000 |
| 駆動方式 | シャフト |
| 減速比(1次 / 2次) | 1.136 / 4.196 |
| キャスター角 | 28°30′ |
| トレール量 | 110mm |
| タイヤ(前) | 130 / 70ZR17(62W) |
| タイヤ(後) | 190 / 50ZR17(73W) |
| ブレーキ形式(前) | 油圧式 W ディスク |
| ブレーキ形式(後) | 油圧式 S ディスク |
| 懸架方式(前) | テレスコピック式(正立) |
| 懸架方式(後) | スイングアーム式(プロアーム)・ショックアブソーバ 1本 |
| フレーム形式 | ダブルクレードル |
| 発売日 | 2008年3月7日 |
| メーカー希望小売価格 | 1,239,000円 |